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陰翳の煌き

『悲母観音』

「もう自分の最後の作品になるかもしれないから 最後にこの観音像を描きたい…」と84歳になる生徒さんがそう言われた。手にされていたのは 狩野芳崖の絶筆『悲母観音』の画集だった。

それは日本美術史上 名品中の名品で 「近代日本画の幕開けを告げる記念碑的作品・・」ともいわれている。そして 芳崖は この作品を描き上げた4日後に亡くなっている。

これを模写するのはかなり難しい。しかも体力がいる。実物は2m程あり 半分の大きさに縮小したとしても その分細かさが増し 眼と神経を酷使する。

高齢なのでどうだろうか?と心配である。しかし 大変なのは本人も十分理解し その上で「描きたい!」と言われている。ということは… 命をかけて描いていこうと覚悟されているのだ。

「絵があったから今まで生きてこられた…」との言葉に 「では少しずつ頑張って描いていきましょう!」と声をかける。

『悲母観音』_b0152027_2124734.jpg


写真のように まず薄い紙に試し描きをし 手を慣らしてから 絹本に線描していく。来年の教室展には この「悲母観音」が掛け軸となって並ぶことだろう。

昨年 「狩野芳崖 悲母観音への軌跡」が開催されている。→ こちら
by ukishimakan | 2009-01-27 21:47 | 作品