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陰翳の煌き

風化した板

数年前まで 屋敷の東側に壊れかけた蔵があった。
ここを初めて訪れた頃から壁が剥がれ壊れかけていたが まだ趣きがあるなぁという感じだった。

それが数年たって 趣きが危険へと変わった。
屋根に穴があき 徐々に傾いて 雨の日は軒先の瓦も落ちるようになった。

あるとき 倒してしまおうと 瓦を落ちるだけ落として 柱に鋸で切れ目を入れ ロープを結びつけて車で引っ張った・・・。
しかし全く動かない。見た目はすぐ倒れそうなのに なかなか倒れず 壊すのをあきらめたことがあった。


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それから数ヶ月たった梅雨の頃 雨の降り続く夜だった。
モモがなぜか吠え始めた。
蔵の方に向かってしきりに吠えている。
吠えないよう注意するが 暫くしてはまた吠える。

耳を澄ますと雨のなか 蔵の方で瓦が一枚二枚落ちる音が聞こえた。
それから数時間経った夜中未明・・
やはりモモが吠えている。
何とも言いようのない 音なのか気配なのか判断つかないような音と同時に もの凄い振動と響きが体に伝わってきた。

蔵が倒壊した!

座敷の障子を恐る恐るあけ 懐中電灯で蔵を照らすと 雨のなか見事なまでに?倒壊していた。
それから数週間 倒壊した材木の片付けに追われ苦労した。


そうしたなかで作品に使えそうな板を二枚見つけた!
長い年月の経過で浮き上がった木目 月夜にたなびく雲のような釘の錆びの痕 その風化具合がとても気に入ったので 作品に使ってみた。
風化した板_b0152027_14144860.jpg


風化した板_b0152027_14334160.jpg

木目が盛り上がっているので まず三日月の形に平らに削った。
それから何度もドーサをかけ 胡粉で盛り上げたあとに 一枚には金箔を もう一枚には銀箔を貼った。
もちろん裏には板が反らないよう補強をしている。
by ukishimakan | 2008-12-02 14:17 | 作品