花の薪能「半蔀」 2009 健軍神社
薪能は大桜の下 夕刻から始まった。
次第に闇が深まり 時折り吹く風が 花を散らせ炎の影を揺らす・・
笛が高く鳴った瞬間 風は起こった。
散る桜の花びら・・ 舞の妖艶さ・・ 衣装の煌びやかさ・・ 謡や鼓の音の響き・・ 面の微妙な表情・・
いくつもの美しいものが同時に現れ そのどれも見落とさず 感じたい!と そう願ったとき
頭の中でのその情報処理が間に合わず 自分の中に微妙な迷いとパニックが起こる ・・
そしてそれが幽玄な世界への導きとなった。
能の魅力は幽玄さにある。
しかし 能の幽玄さは結果であって 初めからそれを醸し出そうという目的はないのではないだろうか?
それは 風を呼び寄せるように 自然の中の何ものかを出現させようとして 生みだされたものかもしれない。
能の源流のひとつ・・“田楽”を想う。
それがどういうものかよく知らないが そのまた源流には雨乞いなどのような“祈り”が あるのではないだろうか・・
人間が風を呼び 雨を呼ぶ・・。
そのひとつの装置のような役目が 舞や音楽?にはあったはずである。
演能の舞や音が風を起こしたと思える程に 自然と一体になった素晴らしい能の公演だった。
シテは 喜多流能楽師・狩野琇鵬氏。毎年4月6日この健軍神社で ユニセフ協賛チャリティーとして公演されている。
※「半蔀(はじとみ)」 夕顔の霊が光源氏との思い出を語り 舞をまう・・。
by ukishimakan
| 2009-04-09 22:39